読切小説
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【シェアードワールド企画unei】わらべうたをもう一度
「ありがとね、荷物搬入手伝ってもらっちゃって」
 ダンタリアンはイドと、いくつかの段ボール箱に封をされた物資を部室に運び込んでいた。
「これけっこう危ないものがはいってるの。量が多くて一度に運べないけど、目の届かないところに置いておくのも良くないしで立ち往生してたのね。そこにタイミングよくあなたが通りかかってくれたから助かっちゃった。サンテックスあたりがサポートに回ってくれればだいぶ楽になるんだけどなあ。あの人健康優良児で力もありそうだし。でも妙なところでストイックだからそうもいかないんだよね」
 大変そうだとダンタリアンはイドを気遣う。
「ぜんぜん大丈夫だよー。あたしなんてほとんどマネージャーみたいなもんだし。国王一座に拾われてからずっとこんな感じ。『君はおもしろい人間だ。君はきっといい役ができる。私は君が欲しい。私を手伝ってくれるなら手を取ってくれ』なんて言われてさ。ホントにうれしかったんだ。あたしこんな体質でしょ? 顔を覚えてもらえないの。男か女かすらパッて忘れられちゃって。何年一緒につるんでいても、こんなやついたなー、くらいの認識しかないの。ほとんど座敷童? みたいな? だからさ、もう一生あの人についていこうって思った。あの人のために死ぬなら本望かなって」
 そうこうしているうちに喜劇部の部室に到着した。
「ふー、重かった。ちょっときゅーけー」
 ダンタリアンはまだ手伝えることはあるかと聞いた。
「あとはあたしひとりでできるから大丈夫だよ。あ、そうだ。ほかの部員に連絡取りたいときはあたしに言って。連絡先は持ってるから。帽子屋もあたしとならたまに会話してくれるの。なんか『近いからラク』って言ってた。あたしは、仕事してないときは国王一座と一緒にいるし、してないときも国王一座に呼ばれれば飛んで来るからすぐ見つかると思う」
「よく『国王一座に騙されてる』って言われるの。とくにエイハブなんかには。使うだけ使われて捨てられるぞって。でもね、あたしは騙されててもいいの。だってあの人はあたし自身を必要としてくれるから。あの人に会うまでは生涯そんな機会はないんだと思ってた。あたしは元々、替えの利く、かけがえのある人間だった。だけどあの人はあたしを必要としてくれた。だから好き。それでいいのに、どうして文句があるんだろう。それにさ、騙されてるって言う人は別にあたしを必要としてないじゃん。あたしを必要としてない人間の言うことなんかどうして聞かなきゃならないの? なんてね」
17/06/22 00:05更新 / 黄色信号機

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