読切小説
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【シェアードワールド企画unei】俺たちに明日はいらない
 サラの別邸の地下には射撃場が設けられている。カウボーイの衣装を身に纏ったサンテックスはダブルアクションのリボルバーを腰に下げて、二つ立っている人型の標的の前に陣取る。ダンタリアンは別室でガラス越しにその様子を見守っている。
 サンテックスは腰の拳銃に手を添えて息をひそめる。
 次の瞬間、引き抜かれた銃は二回火を吹き、二つの標的の心臓部分を正確に打ち抜いた。銃声は一つになって辺りに残っている。
 彼は銃をくるりと回してベルトに納める。
 そして再び銃身を抜くと、左の標的の心臓と頭に穴が増えた。
 銃口を吹き、振り向きながらテンガロンハットのつばをあげ、彼はダンタリアンにむけてウィンクした。
 ダンタリアンのいる部屋に戻り、彼は帽子を外しながらキザったらしく礼をする。
「グラシアス、ダンタリアン。まあくつろいでくれ。俺の家じゃないけど」
 彼はそういいながら、テーブルで拳銃を分解し、整備を始める。
「何で右の的も撃たないんだろうって思ったかい? それは演出のためだよ。簡単なことさ。銃弾をぶち込まれた瀕死の敵が、最後の力を振り絞って一矢報いろうと、背を向けて立ち去ろうとする俺に不意打ちの銃を構える。俺はそれに気づいていて振り向きざまに拳銃だけ弾き飛ばす、とか、本当に気づかずにいてピンチなところを仲間に助けられる、とか。やりようはいくらでも思いつく。詰めが甘い方が、物語に張り合いが出るってもんさね」
「得意なのは銃だけじゃないぜ。武芸十八般はすべて修めていると思ってもらってかまわない。伊達に伊達男気取ってるわけじゃないさ。定期的にエイハブを捕まえて稽古をつけてもらってる。実戦経験はあいつほうが上だね、確実に」
 ダンタリアンが衣装を気にする素振りを見せる。
「ん? この服か? どうやって調達したかはちょっと説明が難しいんだが、要点だけ言えば、一部はイドのお手製、一部は俺が買ったもの、残りは俺がつくったものだ。つっても、保安官バッジとかかとの拍車くらい。金属の小物だったらちょちょいでつくってやるよ。ドッグタグは欲しい? いらない? そうかい」
 彼はそばの丸椅子にドスンと腰を下ろす。
「世の中は演出がすべて。勝つ方も負ける方も、演出がまずかったら記憶に残らない。俺は誰かの記憶に残る人生をおくりたい。だから俺はこうして自分を演出する生き方をしてんのさ。でも記憶に焼き付いた姿がみっともないってのは嫌だ。俺は豊臣秀吉になりたいんじゃない。織田信長になりたいんだ。徒然草にもあるだろ? 四十いかないくらいで死ぬのが、恥が多くなくていいって。俺は永遠にかっこいい男のままでいたいんだ。どれだけバカと言われようがね」
 ここまでうんうんと頷きながら話を聞いていたダンタリアンがひとつ質問をする。
「え? 好きな銃? そりゃもちろん『リベレーター』さ」
 気まずい沈黙。
「……いやすまん、てきとう言いすぎた。忘れてくれ」
17/06/08 00:06更新 / 黄色信号機

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