読切小説
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【シェアードワールド企画unei】三月には早すぎる
「帽子屋と会いたいんだね、わかった。ちょっと待って」
 そう言ってイドは、ウエストバッグをあさって一枚の紙きれを取り出す。
「携帯じゃ連絡がつかないからって連絡方法を指定されてるの。機会がなかったしこれが初めてなんだけど……」
 彼女は紙をのぞき込みながら、ついてくるようダンタリアンに言った。
「東から第一第二校舎の間を通り抜けたらその先の一本杉を三回ノック。『もしもし』といって何も起こらなかったらもう一度三回ノック……だって」
 二人は紙のとおりに東側から校舎の間を通って大きな杉の木の前に立った。
「こんな目立つ杉の木あったかな?」
 イドは疑問に思いながら杉の木を三回ノックする
「もしもーし」
 あたりは静まり返っている。
 彼女が怪訝な顔をしてもう一度ノックをしようとすると、突然両肩をつかまれ、驚きのあまり「ひゃぃっ!」と素っ頓狂な声をあげながら飛びのいた。
 イドを驚かせたのはカンカン帽をかぶった帽子屋だった。
「ーー♪」
 目は虚空を見つめてなにやら鼻歌を歌いながら立っている。
「え、えっと帽子屋、ダンタリアンが話をしたいんだって」
 イドは帽子屋を無理矢理ダンタリアンの方へ向ける。帽子屋はダンタリアンをのぞき込むが、首をかしげて二歩遠ざかる。
「? ~~♪」
 彼はポケットから微妙にくしゃくしゃになった紙をイドに握らせてふらふらと姿を消した。
 彼の残した紙を広げてみると、達筆な字で『また満月の夜に。どこかで。 帽子屋』とだけ書いてあった。
「多分、今度は向こうから来てくれるのかな?」
 二人はまあいいかとその場を後にした。
17/07/06 00:03更新 / 黄色信号機

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